2015年夏に始まったインスタグラムの新広告メニューに広告主が群がっている。これまでは厳しい選定基準を越えた広告主に限られていたが、現在は代理店を活用し、販売網を拡大した。同社の動画広告は1ビューあたり2セントの価格だが、親会社のFacebookを上回る広告効果があると業界関係者の声もある。
2015年夏に始まった、インスタグラムの新しい広告メニューに広告主が群がっている。これまでは厳しい選定基準をクリアした広告主しか出稿できなかったが、複数の代理店を通して、出稿が可能になった。
業界関係者によれば、同社の動画広告は1ビューあたり2セント。親会社のFacebookを上回る広告効果があるとの声も聞こえる。インスタグラムは将来性を有望視されており、2018年までに全米のインターネットユーザーの3分の1が、同サービスを利用するという予測もあった。その一方で、急拡大の反作用による広告品質の劣化を懸念する関係者もいる。
代理店活用で販売網拡大
2015年9月8日、インスタグラムは広告販売をグローバル規模に広げたと発表した。最新の30秒動画広告をラインナップに加え、広告収入の拡大を目指しているという。
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ブランド企業の広告配信に携わるテクノロジー系企業の関係者はこう話している。「CPM(表示1000回あたりの料金)は平均で3ドル近い。Facebookで広告出稿するよりも、インスタグラムへの広告出稿のほうが、はるかに効果的だ」。
インスタグラムが広告事業を本格展開したのは、2015年夏。つい最近まで、プレミアム・キャンペーンの門戸は、選ばれたひと握りのブランドにしか開放されていなかった。すべてのスポンサード画像や動画を吟味するという、ブティックに似た手法を使っていたからだ。
これまでのように厳しい広告のクオリティチェックは続いているが、広告主による出稿は目に見えて増えた。クラウド顧客管理・営業支援のセールスフォースや、デジタルマーケティングソフトウェア開発のイスラエル企業ケンショー、Facebook広告最大手のナニガンズ、ソーシャルメディア展開支援のスプリンクルなどの代理店を通じて、企業はインスタグラムの広告枠を買っているのだ。
動画広告は1ビューあたり2セント
提携先による営業は始まったばかりのため、まだデータは揃っていないが、セールスフォースによると、スポンサーが支払うCPMの平均は6.29ドルが相場だという。また、他の広告提携先によれば、CPM平均は半額の3ドル、動画の場合は1ビューあたり2セントと算定している。インスタグラムの動画は最低3秒見たら1ビューとカウントしており、Facebookと同じだ。
動画広告の効果を最大限まで上げたいのであれば、コストは約6セントになると、ある営業は言う(データの開示権限を与えられていないので、匿名での返答)。なお、インスタグラムはコメントを拒否した。デジタル広告界でもっとも成長が著しい動画広告には、TwitterやYouTube、Snapchat(スナップチャット)、Yahoo!も投資している。
1ビューあたり2セントというレートなら、同額のSnapchatと競争できる。なお、YouTubeのプレロール広告は10セント。一方、プレロール広告全体の平均相場は2セントだ(動画広告テクノロジー企業のチューブ・モーグル社調べ)。
競合と同様の条件も、効果に期待感
しかし、デジタルエージェンシーである22スクアッドの開発提携担当部長クリス・タフ氏によると、こうしたプレロール広告よりも価値あるインプレッションを生み出すのがインスタグラムの動画だという。
「インスタグラムではモバイル上で全画面表示が基本だからだ。インスタグラム上で表示されるコンテンツには明瞭性がある。そこがコンセプトなのだ」
(左から)①ディスプレイ広告、②動画広告、③カルーセル広告(スワイプして広告をめくれる広告)―の3種類ある[出典:Instagram for Buisness]
タフ氏は「Facebookの動画と比べても、インパクトが大きい。自動再生されるフェイスブック動画は、インスタグラムのスポンサード画像よりも無視されやすいからだ」と語った。
インスタグラムの打つ手はビジネスのエコシステム(生態系)拡大にとどまらない。これまで正方形だった写真や動画をワイドスクリーンやタテ型写真で表示できるようにするなど、フォーマットそのものを変えているからだ。
インスタグラムの広告は高い価値があると、業界関係者は指摘している。セールスフォースによると、インスタグラムでの広告のクリック率は1.5%。Facebook(0.84%)の約2倍だとしている。「インスタグラムはモバイル・フォーマット広告で最高級だ」と、セールスフォースは最近の自社ブログに投稿した。
しかし、広告出稿が増えれば増えるほど、その輝きが失われるのではないかと心配する声が出ている。あるテクノロジー系提携企業の関係者は、こう呟いた。「クオリティが落ちてしまわないか、注視していたい」。
Garett Sloane(原文/ 訳:南如水)
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