かつて米クルーズ企業ロイヤルカリビアン(Royal Caribbean)は、SNS上で問い合わせを受けると、返答までに2時間を要した。内容を確認してからスクリーンショットを撮り、eメールに添付し、担当者から返信の正式許可を得るという手順を踏んでいたのだ。ところがいまや、ほとんどに11分少々で回答しているという。
かつて米大手客船会社のロイヤルカリビアン(Royal Caribbean)は、SNS上で顧客から問い合わせを受けると、返答するまでに2時間を要した。内容を確認してから、スクリーンショットを撮り、eメールに添付し、担当者から返信の正式許可を得る、という手順を踏んでいたのだ。ところがいまや、そのほとんどに11分少々で回答しているという。
Facebookで300万人のフォロワーを抱え、Twitterには19万3000人のファン、またインスタグラムに38万9000人のフォロワーを擁するブランドが、このようなカスタマイズやアジリティ(機敏さ)を実現させるのは簡単なことではない。しかし、ロイヤルカリビアンは米ソフトウェア企業スプレッドファスト(Spredfast)のカスタマーケア用ソフトウェアを導入し、このプロセスを合理化することに成功した。これを利用すれば大量のソーシャルインタラクションを迅速に、また効率的に管理することができるという。
重要度増す、SNSコミュニティ管理
ロイヤルカリビアンクルーズのマーケティング担当バイスプレジデント、カラ・ウォリス(Kara Wallace)氏は、「我々が置かれている環境では、ブランドがスピーディに、顧客の期待に応える必要がある」と話した。「つまり、SNSを通じて顧客と1対1の関係性を育み、いち早くレスポンスしていくということだ」。
Advertisement
一連のダッシュボードやセンチメント分析、ハッシュタグ分析などの拡張機能により、さまざまなSNSおよびデジタルチャンネルを同時にモニターし、自身に関する会話に耳を澄ませ、またオンラインコミュニティを管理できるようになった。同ブランドのカスタマーケアチームのひとつとして、18のエージェントがSNS上の会話をモニタリングしている。24時間通して、少なくとも2つのエージェントが自身のソーシャルチャンネルを監視しているのだ。
「SNSのコミュニティ管理は現代のマーケティングミックスの重大なコンポーネントとなっている」と語るのは、ロイヤルカリビアンでソーシャルメディアコミュニティプロデューサーを務めるクリスティン・ペレラ氏。「過去2年間で、我々はSNSにおける全体的なアウトリーチと危機の双方に対応するための足掛かりを見つけ出した」。
攻守ともにソーシャルを活用
例を挙げよう。今年5月、ロイヤルカリビアンの乗客だったブライアン・ウェストブルック(Brian Westbrook)氏は船上から同社のTwitterで、何か飲み物がほしいとツイートした。すると同社のSNSチームが船の船上スタッフと連携し、ブライアン氏は最初のツイートから40分でマルガリータを受け取った。
また、その対極となる出来事だが、今年の2月にクルーズ客船アンセム・オブ・ザ・シーズ(Anthem of the Seas)は海上で嵐に遭い、さらに船内はノロウイルスに襲われた。これはSNS炎上の絶好のネタになる。しかし、ロイヤルカリビアンのSNSチームがリアルタイムで会話の動向を追い、その瞬間での乗客のリアクションやレスポンスをモニターすることができた。
同ブランドはリアルタイムでトップトレンドやトピックを追跡することを非常に重視しており、スプレッドファストのデータを使って、人々が何について聞きたいのかを知りたいと考えている。先述の危機に際して同チームは、「アンセム・オブ・ザ・シーズ」タブを別個作成し、関連情報を簡単に引き出すことを実施。同時に、そこから手を引くタイミングについても知りたいと考えた。もはや、リアクションが不要になるところまで、会話が減ってきたときがそのタイミングだ。
「我々はゲストの趣向や行動を知りたいだけではない」とウォレス氏はいった。「問題は、彼らとより良い関係を育むために、我々がどうやって知識を生かせるのか、ということだ」。
次のステップは専属チーム
ロイヤルカリビアンは全チャンネルを通してソーシャルカンバセーションをモニターしているが、しかしもっともエンゲージメントが高いのはTwitterとFacebookだ。ソーシャルメディア分析企業のアンメトリック(Unmetric)によると、Twitterで同ブランドに1月から11月に寄せられたコメントは7万5000件以上だという。2016年10月だけを見ると、同ブランドはSNS上で3500件を超える投稿にレスポンスし、これは1日平均125件となるが、その平均レスポンス時間は11分44秒だった、とペレラ氏は話す。
カスタマーケアの代表者がコメントへのレスポンスを決定するとタイマーがセットされ、質問には色が割り当てられる。質問に対応を開始して最初の7分間、メーターは緑色でその後黄色になるという。11分経っても解消されない場合、メーターは赤に変わるのだ。
いまのところ、カスタマーケアチームはカスタマーSNSやeメール、そして電話のすべてに対応している。最終的には、ロイヤルカリビアンは専属のソーシャルカスタマーサービスチームをもちたいと考えている。「まだ我々は、専属チームを保証するには、ボリュームが足りていない」と、ウォレス氏。「でも、それが次のステップだ」。