Amazonの広告事業拡大が話題になっているが、AMS (Amazon Marketing Services)へのマーケターからの評価はGoogleやFacebookにはおよばないようだ。Amazonがこの2大プラットフォームに対抗するための課題とは何か?
Amazonの広告事業拡大が話題になっているが、その機能改善はGoogleやFacebookほど進んでいないようだ。たとえば、有料のセルフサービス検索マーケティングツールである、AMS(Amazon Marketing Services)は、広告主がAmazonで効率的に検索キャンペーンを実行するために役立つものであるはずが、実際には手動での作業が多く伴い、そのレポートティングサービスも不十分だと広告主たちは考えている。
いまのところAMSは、Amazonの検索結果の下に表示されるスポンサープロダクト広告、検索結果の上に表示されるヘッドライン検索広告、該当商品の詳細ページに表示される、商品ディスプレイ広告の3つのフォーマットを提供している。今回インタビューした4人のメディアバイヤーは、AMSがAmazonでの宣伝に欠かせないものであるとしつつ、セルフサービスの検索マーケティングツールは期待したほど便利ではないと指摘した。
現状は投資段階の事業
「AMSはファーストパーティーセラーとサードパーティーセラーの両方に展開される成長事業であり、Googleに対抗できる検索エンジンになるポテンシャルを秘めている。しかし、そもそも検索広告に基づいてビジネスを構築しているGoogleのDNAをAmazonは持ち合わせていない。Amazonのコアビジネスはいまだにeコマースであり、広告事業に関しては現状投資段階だ」と、Amazonのコンサルタント業務を請け負う、バイボックスエキスパート(Buy Box Experts)のマーケティングディレクター、ニッチ・ワインハイマー氏は述べる。
Advertisement
GoogleとFacebookは使いやすい広告システムを構築している点で、Amazonよりも非常に有利なスタートを切っている。そこが大きな違いだ。
「AMSキャンペーンの設定には手間がかかり、予算管理もいまだに手作業で行われている。在庫切れの商品に対する広告配信の自動停止には、長所と短所がある」と、エデルマン(Edelman)のパフォーマンスマーケティング担当責任者、トッド・シルバースタイン(Todd Silverstein)氏は語る。
現状の最優先は自動化
ニューヨークを拠点とする匿名希望の広告バイヤーは、シルバースタイン氏の所感に同意。また、AMSは「スピードに関する制約がある」と付け加えた。なぜなら、Google AdWordsと比較してキャンペーンの設定と管理や結果の入手に、より長い時間がかかるからだ。
「AMSは手動ツールだ。これまでのところ自動化されていない」と、このニューヨークを拠点にするエグゼクティブは述べる。「AMSの自動化はAmazonの優先事項だ。Google AdWords向けに当初設計されたサードパーティツールの大半が、2018年前半にAMS向けにも対応するようになると信じている」。
ワインハイマー氏によると、AMSでは、広告主はキャンペーンのレポートティングを細かく効率的に計画したり、ダウンロードすることができず、ダッシュボードから手作業で各キャンペーンのデータを入手する必要がある。特に、通常ひとつのキャンペーンにたいしてひとつの製品が対象となるので、多岐にわたる商品を取り扱う広告主にとっては面倒だ(AMS広告ユニットで、企業が複数の商品をひとつのキャンペーンにまとめることが可能なのは、ヘッドライン検索広告のみだ)取扱い商品数が増えれば、AMSのキャンペーンリストが長くなり、キャンペーンごとにパフォーマンスデータを取得し、日々キャンペーンを更新することが複雑になると、ワインハイマー氏は述べた。
ターゲティング機能に課題
効率の悪いキャンペーンレポーティングに加えて、ワインハイマー氏は商品ディスプレイ広告とヘッドライン検索広告の仕組みが魅力に欠けると考えている。これは、AMSがGoogle AdWordsと同じように機能しないからだ。AMSはキーワードターゲティングを超えたものとなっている。たとえば、商品ディスプレイ広告では、広告主は買い物客の関心に基づき、マニュアル手動でターゲット設定を行うか、もしくは、Amazonの標準識別番号(Amazonが各商品に付与する識別番号)のリストを対象にする必要があるのだ。
「ヘッドライン検索広告はキーワードベースの広告ユニットだが、ヘッドラインを作成し、その広告が買い物客をどのランディングページに誘導するかを決める必要がある」と、ワインハイマー氏はつけ加えた。
また、エージェンシー幹部らは、広告キャンペーンのキーワードがAMSで低、中、または高キーワードであるかどうかを広告主は確認できるが、広告の実際のボリュームシェアを確認することができず、Amazon検索マーケティングでの宣伝出費が無駄になりかねないと指摘する。一方、Googleでは広告主は特定のキーワードのボリューム数を調べ、自身の獲得クリック数と比較して、どれくらいの市場シェアを追及できるのか判断することができる。
「我々はAmazonを信用すべき」
ただ同時に、エージェンシー幹部らはAMSをGoogle AdWordsと比較することはフェアではないと考えている。なぜならアルゴリズムが異なるからだ。メディアバイヤーによると、Google AdWordsはページ情報とキーワードの関連性に重点を置いているのに対して、Amazonは商品の売り上げ、プラットフォーム上の製品レビュー 、そのあとでキーワードという順番で検索広告を並べているという。セカンドプライスオークション(ゲーム理論をベースにしたオークション手法のこと)はGoogle AdWordsとAMSの両方で実施されている。
Amazonは広告主の苦労を認識しており、大量の商品を扱うキャンペーンの管理と実行をサポートできるようにその広告ツールの改善に取り組んでいる。Amazonのスポークスパーソンは、「この分野はもちろん、まだ初期段階にある」と語った。「エージェンシーや広告主は、我々がツールの効率を上げるよう取り組むために貴重なフィードバックを多く共有してくれている。我々は非常にこの分野を重要視しており、今後も継続していく予定だ」。
AMSの課題にもかかわらず、クリスマス商戦を前にして小売業者はAMSにさらに多くの費用をかけており、優秀なマーケターたちは、来年にはAMSが自動化されると考えている。「Amazonはすでにケンショー(Kenshoo)といった企業と自動化について取り組んでおり、2018年にはさらに多くのデータAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)の統合がAMSで実現すると信じている。我々はAmazonを信用するべきだ。同社はエージェンシーのサポートと商品開発に驚くほど注力している」と、ワインハイマー氏は述べた。