Amazonはこれまで、自社プラットフォームでのコンテンツ・サブスクリプション販売に熱心とは言えなかった。だが、一部のパブリッシャーは現在、自社サイトなどでの購読者獲得から、Amazonのモバイル決済サービス「Amazon Pay」に目を向けている。
Amazonはこれまで、自社プラットフォームでのコンテンツ・サブスクリプション販売に熱心とは言えなかった。だが、一部のパブリッシャーは現在、自社サイトなどでの購読者獲得から、Amazonのモバイル決済サービス「Amazon Pay」に目を向けている。
Amazon Payでは、サイト訪問者は、すべての情報を手入力するのではなく、2回のタップでクレジットカード情報を入力できる。Amazon Payを利用したおかげで、フリクション(摩擦)が「大幅に」減り、コンバージョンが向上したと、テレグラフ(The Telegraph)の最高情報責任者を務めるクリス・テイラー氏は語る。最近、ズオラ(Zuora)を通じてAmazon Payを追加したシアトル・タイムズ(The Seattle Times)は、すでに、Amazon Payが定着率の上昇に「不可欠」だと見なしていると、同社の発行およびオーディエンス売り上げ担当シニアディレクターのカーティス・ヒューバー氏はいう。
疑念とポテンシャル
パブリッシャーが送信する顧客データをAmazonが保持することもあり、Amazonがコンテンツやユーザー体験への野心を増加させていることについては、パブリッシャーは疑念を抱いている。一方でパブリッシャーは、Amazonの巨大な消費者基盤を活用できることにポテンシャルを見ている。米国の消費者の半数以上が、Amazonでeコマース検索を開始し、Amazonプライム(Amazon Prime)の会員数は1億人を超えている。Amazonのアフィリエイトプログラム「Amazonアソシエイト(Amazon Associates)」を通じて、コマース収益の80%を稼いでいるパブリッシャーもある。
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Amazon Payを使うパブリッシャーは、顧客の(クレジットカード番号ではないものの)連絡先情報を利用して、顧客と連絡を保ったり、契約更新したり、その後により高額な商品を売ったりすることができる。
「人々はAmazonがeコマース業者だと考えているが、それがAmazonの成功の秘訣ではない。Amazonは顧客と一対一の関係を築いている」と語るのは、サブスクリプションサービスプラットフォーム、ズオラの創設者兼CEOであるティエン・ツォ氏だ。ズオラは10月11日、自社サービスにAmazon Payを統合した。シアトル・タイムズとテレグラフはいずれもズオラの顧客だ。
モバイルウォレット時代
Amazon Payは10年以上前から存在する。2016年には、170カ国の3300万人に上る人々が、Amazon Payを利用して何かを購入したことが明らかになっている。
Amazonにしてはこの普及率は比較的低いかもしれないが、モバイルのコンバージョン率向上を切望するパブリッシャーは、何でも試そうと意気込んでいる。エクスペリエンス・マーケティング・プラットフォームを手がける企業マネテート(Monetate)のデータによると、全業界で、モバイルコマースのコンバージョン率は2%強で、デスクトップのコンバージョン率(3.8%)の約半分となっている。
シンクロニー(Synchrony)が2018年春に発表した調査結果によると、米国の消費者の大多数は、2025年までにモバイルウォレットが財布代わりになると予想しているという。そうなるにつれ、サブスクリプションモデルを採用するパブリッシャーは、コンバージョンを最大化するために、できるだけ多くの決済サービス会社を統合しなければならなくなる。
サブスクリプションマーケティングエージェンシー、フォシナ・マーケティンググループ(Fosina Marketing Group)の創設者ジム・フォシナ氏は、次のように語る。「提供されるコンテンツの質にユーザーが集中できるように、バックエンドの管理をもっともうまくこなしているコンテンツプロバイダーが、勝利するだろう」。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)