言えない#MeToo、でも#WeTooなら-セクハラ問題で注目
小田翔子、森来実、片沼麻里加-
女性社員3割がセクハラ経験、被害者6割が「我慢した」-調査
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黙認されてきた、目を覚ますきっかけに-A.T.カーニーの小林氏
「他人事でも政治の話でもない。あなたはどうだった?」。前財務事務次官のセクハラ問題が浮上した先月、フリーライターの福原桃似花さん(26)はブログに書き込んだ。
福原さんはセクハラに苦しむ女性の支援団体「#WeToo Japan ウィートゥー・ジャパン」のオーガナイザーだ。2月に発足した団体は、米国発の一人で訴える「#MeToo」(私も)ではなく、一緒に寄り添う「#WeToo」(私たちも)を掲げ、啓発活動に取り組む。設立趣意書では「セクハラやパワハラ、一切の暴力を許さない『これから』を作っていくため」行動すると訴えた。
福原さんはブルームバーグの取材に「被害者への偏見が多い日本では実名でMe Tooと声を上げるのはかなりハードルが高い」と話した。福原さんも大学生の時、バイト先の飲食店でセクハラ行為を受けたが、何も言うことができなかった。男性店長は見て見ぬふりをし、「悔しい」という思いは今も残る。「現状を知ってもらい、認識を変えたい」と活動を始めたという。
前財務事務次官のセクハラ問題が先月12日発売の週刊新潮に報道されると、与野党から批判が集まり、内閣支持率の低下につながった。批判を受けた財務省は、調査の結果、セクハラ行為があったと判断し、懲戒処分に相当すると発表した。福田淳一前事務次官は混乱の責任を取って辞任したが、セクハラ行為は否定している。
経営コンサルティング会社A.T.カーニーのパートナー小林暢子氏は、前財務事務次官の問題をきっかけにセクハラへの関心が高まっており、「長年セクハラは黙認されていたが、目を覚ますきっかけになる」と語った。また日本企業の経営陣の多数を男性が占めることが、セクハラの告発が困難な一因との見方を示した。
泣き寝入り
労働政策研究・研修機構が2016年に発表した実態調査では3割の女性社員がセクハラを経験している。被害者の63.4%が「我慢した、特に何もしなかった」と回答しており、泣き寝入りしているのが現状だ。
セクハラ被害を訴える#MeToo運動が広まった米国では、映画プロデューサーや上院議員、企業経営者が会社破綻や辞職に追い込まれている。日本企業にとっても、セクハラは許されない行為となっており、共同通信によれば、日本ハムの前執行役員が昨年10月、航空会社の女性従業員に不適切な発言をし、同席した前社長とともに今年1月に辞任した。
前財務事務次官のセクハラ問題をきっかけに、先月28日に新宿駅前で開かれた「私は黙らない街宣」。司会を務めた大学生の溝井萌子さん(22)は「女性に限らず、男性も含め幅広い年代の人が足を運んでくれてうれしい」と話した。財務省の対応に怒りを覚えたといい、さまざまなリスクを抱えながら声を上げた被害者女性を「あなたの大切な人だと想像してみてほしい」と訴えた。