「ビドコン(VidCon)」は、YouTubeのスターたちがはじめたデジタル動画業界のイベントだ。しかし、YouTubeのブランドセーフティの取り組みにより、それらのトップクリエイターたちは、広告収益が減少している。こうした不安が続いたことで、クリエイターたちはYouTube以外に成長を求めるようになった。
「ビドコン(VidCon)」の初日の朝、マーケティング業界の約100人が、いまクリエイターにはどんなビジネスがあるのかを学ぶためアナハイムコンベンションセンターの一室に集まった。パネリストのひとりによると、会場のフロアにたくさんいるクリエイターのためのソリューションは、ブロックチェーン技術にあるのだという。
「独断的な意思決定者に権力がない」と、ユーナウ(YouNow)のマーケティング責任者であるジェイク・ブランズバーグ氏はいう。「YouTubeもFacebookもTwitterも、(クリエイターは)一夜にして資格が止まる可能性がある。コンテンツクリエイター、開発者、そして率直に言って、彼らを支えるユーザーたちに恩恵がある」と、同氏は語る。
デジタル動画業界の年1回のカンファレンスであるビドコンは、YouTubeでビジネスを構築したスターたちとはじまったイベントではある。しかし、YouTubeのブランドセーフティの取り組みにより、小さなチャンネルはマネタイズの資格をなくし、YouTubeのトップクリエイターたちもこの1年間、広告収益が減少している。こうした不安が続いたことで、クリエイターたちはYouTube以外に成長を求めるようになった。ユーナウやブレイブ(Brave)のようなプラットフォームと協力してブロックチェーンの熱狂に飛び込んだり、関連商品の制作と販売でパーソナルブランドを拡大したりしている。
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起業家のようなクリエイター
「起業家のように活動するクリエイターが増えている」と語ったのは、デジタルスタジオのポータルA(Portal A)の創設者でマネージングディレクターのザック・ブルーム氏だ。「まずは、YouTubeでたくさんのフォローを獲得することからはじまるが、オリジナルIP、書籍の出版、アパレルや関連商品の販売、制作会社の設立、ライブイベントなどに拡大している」。
関連商品については、Amazonが売り込んでいる。このeコマース大手は、2018年のビドコンのスポンサーだったが、それはプライムビデオを宣伝しようとしたのではない。Amazonはクリエイターがブランド関連商品をオンデマンドで制作販売できる「Merch by Amazon」を提供しているのだ。ハナー・ハート氏やシェーン・ドーソン氏のようなYouTube中心のクリエイターが、Tシャツとポップソケッツを両方、作っている。イニシャルコストと在庫リスクがなく、山のような商品が倉庫に売れ残ってしまうことがないと、Amazonはクリエイターに売り込んでいる。
Amazonで戦略的パートナーシップの責任者を務めるアイバン・ロペス氏はパネルで、「売れたらクリエイターにお金が入る。すばらしい品ぞろえが大金を払うことなく構築できる。本当に長期的な関係の構築になる」と語った。
ユーチューバーの関連商品
実際に、ビドコンではファンたちがクリエイターのブランドのTシャツ、帽子、バッジなどを身につけていた。クリエイターも自分のものを着ていた。YouTubeコミュニティでは、それで非礼にあたるということはないようだ。
You see, my fellow jokers (and joker-ettes!!), the joke here is that many Youtubers already wear their own merch, especially at conventions such as these. Enjoy the chuckles and keep those goofs and gags merry!
Xoxo
Your ol' Uncle Jack— jacksfilms (@jacksfilms) 2018年6月20日
@vidconに向かっています! 自分の関連商品を身につけている、ユーチューバーだから見つけてみてくださいな
冗談仲間はわかると思うけど。すでにたくさんのユーチューバーが自分の関連商品を装着しているという冗談。特にこうしたコンベンションではね。おどけたギャグなんだから笑って楽しんで!
XOXO
年老いたジャックおじさんより
「くだらないものを売っているユーチューバーがたくさんいる」と、パネルでは俳優のオーラン・ロジャース氏が関連商品について語った。「『イエス』と書かれたシャツを売っていた。私ならデザイナーに頼んで自分が着たいようなものを作ってもらう。自分が買わないようなものなら、売らないことだ」。
その発言に対して、Jack and DeanというYouTubeチャンネルのディーン・ドブズ氏は同じパネルで、「僕はパーカーを売っているけど、いつも着ている」と語る。
プラットフォームからの収益
広告収益と関連商品のほかに、パトレオン(Patreon)などのプラットフォームを通じてサブスクリプションで収益を得ているクリエイターもいる。パトレオンのプロダクト担当VPのワイアット・ジェンキンズ氏は、定期的に制作しているクリエイターたちに向けて、「メンバーを構築することで熱意をキャリアに変えるという選択肢が、いまはあるのだ」と語った。
ビドコンに参加しているプラットフォームたちも、自分たちはクリエイターの公平なパートナーだと売り込んでいた。インスタグラム(Instagram)とSnapchat(スナップチャット)は、会場の専用スペースにクリエイターたちを誘い、新しいツールやクリエイター向けの戦略について語っていた。一方、ライブストリーミングアプリのライブミー(LiveMe)は、展示会場にブースを設け、そこで1時間ごとに観衆に現金を繰り出していた。実は、ライブミーのクリエイターは、広告によるモデルではなくアプリ内チップで稼いでいる。
YouTubeへの不満がでたが、クリエイターもマーケターもYouTubeが終わりだとは言わなかった。ライズ(Rhize)のCEOであるマリー・リーフ氏はブロックチェーンのパネルで、YouTubeの民主的な性質を指摘した。
「ウーバー化は私は好きではないけど、タクシーサービスは中央集中だった」と、リーフ氏語る。「ウーバーがやったのは、普通のドライバーがウーバーのシステムに参入できるようにすること。私はこれを、YouTubeがいまやっていることになぞらえる。YouTubeは普通の人がクリエイターになれるようにしている」。
Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)